アレルギー性鼻炎 Allergic rhinitis
定義と分類
アレルギー性鼻炎(Allergic rhinitis; AR)は鼻粘膜のⅠ型(即時型)アレルギーによる疾患で、発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉(いわゆる、くしゃみ・鼻水・鼻づまり)の3つの主症状がみられるものです。背景にはアレルギー素因を持ち、IgE抗体値が高く、血液中の好酸球が増加し、粘膜の過敏性が亢進している状態があります。アレルギー性鼻炎は、通年性と季節性に分けられ、よく知られているのは季節性アレルギー性鼻炎である花粉症(Pollinosis)です。花粉症の患者さんは高率にアレルギー性結膜炎を合併しています。通年性アレルギー性鼻炎はダニによるものが代表的です。
治療
重症度に応じて治療法が選択されますが、中心となるのは鼻噴霧用ステロイド薬で即効性が期待できます。
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軽症
①第2世抗ヒスタミン薬 ②遊離抑制薬 ③Th2サイトカイン阻害薬 ④鼻噴霧用ステロイド薬 のいずれか
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中等症
<くしゃみ・鼻漏型>
①第2世代抗ヒスタミン薬 ②遊離抑制薬 ③鼻噴霧ステロイド薬 のいずれかまたは①②に③を併用
<鼻閉型>
①抗ロイコトリエン薬 ②抗プロスタグランディンD2・トロンボキサンA2薬 ③Th2サイトカイン阻害薬 ④第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤 ⑤鼻噴霧ステロイド薬 のいずれかまたは①②③に⑤を併用
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重症・最重症
<くしゃみ・鼻漏型>
鼻噴霧ステロイド薬+第2世代抗ヒスタミン薬
<鼻閉型>
鼻噴霧ステロイド薬+抗ロイコトリエン薬 または抗プロスタグランディンD2・トロンボキサンA2薬 もしくは第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤
<鼻アレルギー診療ガイドラインより抜粋>
アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法 Sublingual immunotherapy: SLIT)
アレルギー疾患の原因となるアレルゲンを少量から投与していくことにより体をアレルゲンに慣らしていき、アレルゲンに曝露された場合に起こる症状を和らげたり、長期にわたり症状をおさえることが期待できる治療法です。対象となる疾患はアレルギー性鼻炎、気管支喘息などが一般的で、最近では舌の下に錠剤を置く舌下免疫療法(Sublingual immunotherapy: SLIT)が普及しつつあります。日本ではスギ花粉症、ダニ通年性アレルギー性鼻炎に対して保険適用となっており、多くの医療機関で実施されるようになっています。実施にあたっては、血液検査などによる原因抗原の特定が必要で、スギとダニが原因であった場合には治療を行うことができます。当院では36種類のアレルゲンに対する検査(MAST36)が実施できます。
現在頻用されているSLITはスギ花粉症に対するシダキュア®、ダニ通年性アレルギー性鼻炎に対するミティキュア®です。どちらも初めの1週間は少量から開始して、2週目以降は維持量を毎日服用します。上記のアレルギー治療薬とは異なり、服用してすぐに効果があらわれるわけではなく、治療期間は3-5年程度が見込まれています。治療期間中も症状の原因となるアレルゲンからの回避を心がけることが大切です。しかしながら、当院で治療されている方の多くはシーズン中も抗アレルギー薬を内服することなくお過ごしいただけています。SLITのみであれば薬剤は2か月分の院内処方が可能です。
当院は日本アレルギー学会専門医の所属する舌下免疫療法相談施設ですので是非ご相談下さい。
<鳥居薬品より許可を得て掲載>
ヒト化抗ヒトIgEモノクロナール抗体(オマリズマブ)製剤による治療
季節性アレルギー性鼻炎における新たな治療選択肢として、これまで主に難治性喘息患者さんに使用されていたオマリズマブ製剤(ゾレア®)が2019年12月に本症において世界で初めて承認されました。アレルギー反応に関与しているフリーIgEに直接結合し、その作用を特異的に阻害することで、IgEの肥満細胞、好塩基球等の炎症細胞への結合を阻害します。これら炎症細胞での抗原抗体反応の抑制により、季節性アレルギー性鼻炎のアレルギーカスケードの初期反応を阻害するものです。既存治療で効果不十分な重症例または最重症者に限って使用できます。花粉症をお持ちの方で、これまで様々な治療を行っても効果が得られなかった場合でも効果が期待できる可能性がありますので、お困りの方はいつでもご相談下さい。
花粉症予防行動に関する普及啓発について(厚労省・環境省)
2023年10月に政府の花粉症対策として「発生源対策」「飛散対策」「発症・暴露対策」を3本柱とした初期集中対応パッケージを決定し、これを受けて厚生労働省および環境省においては「普及啓発資材」を作成しています。
花粉症について(リーフレット)