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梅毒 Syphilis

梅毒は、スピロヘータの一種である病原体梅毒トレポネーマ(TP)によって引き起こされる感染症です。かつては「過去の病気」という印象が強いものでしたが、幕末の江戸では「瘡毒(そうどく)」と呼ばれ、多くの庶民が感染していた記録があります。1928年のペニシリン発見により患者数は激減したものの、2000年以降は世界的に再流行しており、特に日本では2015年頃から都市部を中心に報告数が急増しています。現在、最も注意すべき性感染症の一つと言えるでしょう。

感染経路は主に性行為やそれに準ずる行為であり、皮膚や粘膜の微細な傷から病原体が侵入します。侵入した病原体は数時間後には血液を通じて全身へ広がり、多彩な症状を引き起こします。また、妊娠中の感染は胎盤を通じて胎児に影響を及ぼし、先天梅毒の原因となります。梅毒はその症状の多様さから、適切な診断が難しいケースも少なくありません。当院の感染症内科では、正確な診断と適切な治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

梅毒の進行と時期ごとの症状

梅毒は時間の経過とともに症状が変化します。それぞれの段階における特徴を解説します。

第1期梅毒:感染後約3週間

病原体が侵入した部位に、軟骨のような硬さのしこり(初期硬結)が生じます。その後、中心部がくぼんだ潰瘍(硬性下疳)へと変化します。これらは痛みを伴わないことが多く、治療をしなくても数週間で消退しますが、体内から病原体が消えたわけではありません。また、足の付け根(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。

第2期梅毒:感染後約3ヶ月

病原体が血液に乗って全身に広がり、皮膚や粘膜に多彩な発疹が現れます。全身症状として発熱や倦怠感を伴うこともあります。この時期の代表的な皮疹は以下の通りです。

梅毒性バラ疹 体幹、顔面、手足に現れる淡い紅色の発疹。
梅毒性乾癬 手のひらや足の裏に見られる、赤褐色で皮がむけたような皮疹。
丘疹性梅毒疹 小豆大からエンドウ大の赤褐色の盛り上がった皮疹。

この時期には脱毛が見られることもあります。第2期の症状も数週間で自然に消失し、その後、症状のない潜伏梅毒へと移行します。

第3期・第4期梅毒:数年〜10年以上経過

感染から3年以上経過すると、皮膚や筋肉、骨にゴム腫と呼ばれる塊ができることがあります(第3期)。さらに10年以上経過すると、大動脈瘤や神経系の障害(脊髄癆、麻痺性痴呆)といった深刻な合併症を引き起こします(第4期)。現代では早期診断・治療が普及しているため、この段階まで進行することは稀です。

無症候性梅毒(潜伏梅毒)

臨床的な症状が全くないものの、検査で陽性反応が出る状態です。感染から1年以内を早期潜伏期、それ以降を晩期潜伏期と分類します。

梅毒の検査方法と診断

梅毒の診断には、血液検査が主に用いられます。検査には性質の異なる2つの手法があり、両方の結果を組み合わせて判断します。

脂質抗原検査(STS/RPR法) 感染後2週間程度で陽性となり、治療により数値が低下・陰性化するため、経過観察に適しています。ただし、他の病気で偽陽性(BFP)を示すことがあります。
TP抗原検査(TPHA法など) 梅毒特有の抗体を調べるため精度が高いですが、完治後も陽性が持続します。過去の感染歴を含めて診断するために利用します。

当院では即日検査も実施しておりますが、より確実な診断のために精密な外注検査の併用を推奨しています。適切なタイミングで受検することが重要ですので、まずは専門医にご相談ください。

梅毒の治療について

梅毒の治療には、ペニシリン系の抗菌薬を第一選択薬として使用します。病期によって必要な内服期間が異なります。

  • 第1期梅毒:4週間の内服
  • 第2期梅毒:8週間の内服
  • 第3期以降:12週間の内服

2021年9月より、日本でも持続性ペニシリン製剤(ステルイズ®)が承認されました。これにより、早期梅毒であれば単回投与による治療も選択可能となっています。

<日本性感染症学会誌 性感染症 診断・治療ガイドライン2020より抜粋>

梅毒に関する参考資料・外部リンク

梅毒リーフレット(PDF)
(日本性感染症学会、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本臨床微生物学会)

梅毒の皮疹(バラ疹)の症例写真

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