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チクングニア熱

[2019.09.22]

 東南アジアでは雨期も終わりに近づいていますが、この時期に増加するのはデング熱に代表される蚊媒介感染症です。特に今年は東南アジアや中南米におけるデング熱の大流行が発生しており、以前のブログでもお知らせしたとおりフィリピンでは保健省が全国的な流行を宣言しています。デング熱と同じネッタイシマカやヒトスジシマカで媒介する感染症にチクングニア熱があります。今年はデング熱と同様に患者数が増えており、ミャンマーでは9年ぶりに国内で発生したとのことです(https://www.nna.jp/news/show/1945162)。

 チクングニア(chikungunya)という名前はタンザニアとモザンビーク国境にまたがるマコンデ地方の言葉で「曲げるもの」と訳され、体を屈めて関節の痛みに耐える患者の様子を形容したものといわれています。すなわち、発熱や発疹などの臨床症状はデング熱と類似しますが、遷延する関節の痛みが特徴的であり、数か月から数年に及ぶこともあります。関節の痛み以外はデング熱と比較して有熱期間も短く、軽症で回復することが一般的で、血液検査でも異常所見は比較的少ないといわれています。またデング熱にみられるような出血や重症化傾向はほとんどみられず、一度罹ると免疫が獲得されて再感染は起こしません。しかし、チクングニアウイルスはデングウイルスに比べ、ヒトスジシマカの方が増殖しやすく、ウイルス血症も高いといわれており、日本を含む温帯地域ではデング熱よりもむしろ伝播しやすいと推測されています。したがって、デング熱以上に注意すべき蚊媒介感染症なのです。

 確定診断は血液検査で行います。有熱期であればウイルス遺伝子を直接検出するPCR法や簡易迅速診断キットによって診断可能ですが、臨床症状だけではデング熱や他の発熱疾患との鑑別は困難です。また軽症であることからも確定診断がなされずに自然に治癒していることもあるかもしれません。但し、流行地において発熱後に関節の痛みが長く続くようであればチクングニア熱であった可能性があると推測されます。生憎チクングニア熱に対する特効薬はありませんので、発熱や関節の痛みに対しては解熱鎮痛薬などを適宜使用するなどの対症療法のみになります。日本への輸入例は年間10例ほどで、2011 年より四類感染症および検疫感染症に指定されています。

 熱帯地域から帰国後、発熱のエピソードがあり関節の痛みが長く続くような場合はチクングニア熱であった可能性もありますので、ご心配な方はご相談下さい。

輸入チクングニア熱の論文(英文)

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