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2024 マイコプラズマ感染症の流行について

[2024.11.11]

 マイコプラズマ感染症は、マイコプラズマという細菌による感染症で様々な症状をきたします。現在流行しているマイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)と呼ばれる菌による呼吸器感染症で、一般的な肺炎と異なり学童期から成人にみられ、高齢者には少ない感染症です。ほとんどが軽症で自然に治ることもありますがごく稀に重症化することがあります。以前は4年に一度のオリンピック開催年に定期的に流行していたため「オリンピック肺炎」と呼ばれていたこともありますが、最近はその傾向はなくなりました。2020 年に新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まってから今年になるまで、大きな流行は確認されていませんでしたが、現在の流行は最後に流行した2016年の流行を超える流行となっています。

 マイコプラズマ肺炎では、発熱・倦怠感・頭痛・咽頭痛などの症状がではじめて数日後に咳嗽が出てきます。咳嗽は痰を伴うことが少ない乾性咳嗽が特徴で、解熱した後も長く持続することがあり「長引く頑固なせき」と表現されます。ただし、これらの症状だけからマイコプラズマ感染症を診断することは困難です。呼吸器症状以外にも稀ではありますが、中耳炎・皮疹・心筋炎・ギランバレー症候群など肺以外の病気を合併することもあります。

 インフルエンザのように、せきやくしゃみの飛散から感染が拡がる、いわゆる飛沫感染が主体です。潜伏期は2~3週間で、患者と濃厚に接する家族内もしくは職場内などの小集団でしばしば拡がりますが、インフルエンザのように短期間で地域での大規模な感染拡大が起こることは稀であるとされている一方で、学校など同世代が集団生活をおくる場面で流行を引き起こし易いとされ、子供が学校で感染し家庭にもちこむことによる家族内感染事例も多く発生しています。

 インフルエンザと同様に飛沫感染や接触感染しますのでマスク着用のほか、石けんによる手洗いやアルコールによる手指衛生も推奨されます。マイコプラズマ感染症は感染症法上で 5類感染症と定められており毎週の全国の流行状況が把握されています。流行期に発熱や長引く咳がある、周囲に同様の症状の方がいるなどの場合はマイコプラズマに感染している可能性もあるため、医療機関を受診することを推奨します。受診後に適切な診断がなされ、高熱があり抗菌薬で治療を行われた場合には一般的には2~3日で解熱することがほとんどですが、数日しても解熱しないなど症状の改善を認めない場合は、再度医療機関にご相談ください。

 近年マクロライド耐性マイコプラズマによる感染症も多く報告されています。通常のマイコプラズマ肺炎であればマクロライド系薬の治療により48 時間後には 71%の症例で解熱が得られる一方、マクロライド耐性マイコプラズマによる肺炎の場合28%でしか解熱が得られなかったという報告があります。したがってマクロライド系薬による治療を開始して48~72時間以降でも発熱が持続する場合にはマクロライド耐性マイコプラズマによる肺炎ないしは他の原因による発熱の可能性を考える必要があります。マクロライド耐性が疑われ、症状の改善をみない場合にはテトラサイクリン系薬あるいはキノロン系薬に変更する必要があります。

 マイコプラズマ肺炎は学校保健安全法で「第3種感染症のその他の感染症」に指定されています。明確な出席停止期間は定められておらず、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまでは出席停止となります。

 成人におけるマイコプラズマ肺炎とそのほかの肺炎との鑑別には、日本呼吸器学会の「成人肺炎診療ガイドライン2024」の下記の項目についての評価が参考となります。下記の6項目中5項目以上が合致するとマイコプラズマ肺炎を強く疑い、2項目以下合致する場合は細菌性肺炎を強く疑います。3項目または4項目合致の場合は鑑別困難または両病原体の混合感染を考慮します。

<細菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎の鑑別>*肺炎があった場合の鑑別です
1) 年齢60歳未満
2) 基礎疾患がない、あるいは軽微
3) 頑固な咳嗽がある
4) 胸部聴診上所見が乏しい
5) 迅速診断法で原因菌が証明されない*(マイコプラズマ抗原または遺伝子検査陽性を除く)
6) 末梢白血球数が10,000/μl未満である

「マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)急増にあたり、その対策について」日本呼吸器学会(感染症・結核学術部会)・日本化学療法学会・日本環境感染学会・日本マイコプラズマ学会合同声明(2024.11.8)より

 

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