2025/26シーズンのインフルエンザ流行期を迎えるにあたり、日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会より「2025/26 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」がリリースされました。要点を抜粋しましたのでご参照下さい。
<現時点での外来治療における対応>
季節性インフルエンザに対する抗インフルエンザ薬の有効性に関する知見は、有熱期間の短縮のほか抗インフルエンザ薬の早期投与による重症化予防効果が示されているので治療対象者は以下の通り。
・幼児・基礎疾患がありインフルエンザの重症化リスクが高い患者・呼吸器症状が強い患者には投与が推奨される。
・発症後48時間以内の使用が原則であるが重症化のリスクが高く症状が遷延する場合は発症後48時間以上経過していても投与を考慮する。
・基礎疾患を有さない患者であっても症状出現から48時間以内にインフルエンザと診断された場合は各医師の判断で投与を考慮する。
・多くは自然軽快する疾患でもあり抗インフルエンザ薬の投与は必須ではない。
<バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)について>
インフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害する。ウイルスのmRNA合成を阻害してインフルエンザウイルスの増殖を抑制する新しい作用機序の抗インフルエンザ薬として2018年2月から製造販売承認を受けている。さらに小児用顆粒製剤も発売予定。
バロキサビル マルボキシル(以下バロキサビル)の抗ウイルス作用や臨床的効果については、インフルエンザに罹患した12歳以上の健常な小児および成人を対象としたランダム化比較試験が2018年に報告され、バロキサビルはプラセボと比べて有熱期間の短縮が確認されている。以降12歳未満の小児に関する治験や臨床研究の結果が報告され、国内外で概ねノイラミニダーゼ阻害薬と同程度以上の効果や安全性が示されている。小児および成人を対象とした26の試験(11,897例)を検討としたシステマティックレビューおよびネットワークメタアナリシスによると、インフルエンザ罹病期間についてはザナミビル投与群が最も短かったものの、バロキサビルはインフルエンザ関連合併症(肺炎、気管支炎、中耳炎、その他)の発生率および有害事象(嘔気、嘔吐)の発生率が最も低かったことが示されている。更に小児の健康保険組合のデータベースを用いた検討では、バロキサビル投与群はオセルタミビルやザナミビル投与群より入院の頻度が低いことが確認されている。また、B型インフルエンザウイルスに対するバロキサビルの効果については、ノイラミニダーゼ阻害薬に比べて有熱期間が比較的短いとの報告も複数存在する。更に、予防投与は小児を含む家族内感染を減らす効果も示されている。上記のデータは、バロキサビルについてはノイラミニダーゼ阻害薬と同等以上の臨床的有用性を示唆するものであり、費用対効果に優れている可能性が米国、オランダ、中国など複数の国の分析からは報告されている。また、家庭内伝播に関する検討では、バロキサビル投与群はオセルタミビル投与群に比べて2次伝播発生率が41.8%低く、12歳未満児が発端者であった場合も45.8%低いことが確認された。その後の検討でも同様の結果が確認されている。
<抗インフルエンザ薬の予防に対する考え方> インフルエンザの予防については、あくまでもワクチン接種やマスク着用・手洗いなどの対策が基本である。抗インフルエンザ薬による予防投与については、病院内における集団発生やインフルエンザ重症化リスクのある基礎疾患のある患者が曝露を受けた状況においてのみ考慮される。やむを得ず使用する場合は、原則としてノイラミニダーゼ阻害薬を使用する。バロキサビルの使用はノイラミニダーゼ阻害薬耐性株が疑われる状況に限定される。