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レジオネラ症について

[2023.03.01]

メディア等で問題となっている「レジオネラ症」についてMedical Noteに監修した記事が掲載されていますのでご参照いただければと思います。

概要

レジオネラ症とは、レジオネラ属菌と呼ばれる細菌に感染することによって、さまざまな症状が起こる病気です。レジオネラ属菌とは川や湖、温泉、土など自然界に生息する細菌で、20〜50℃の水まわりで生息・増殖することが分かっており、2022年11月現在で約60種類が確認されています。中でも、レジオネア症を引き起こす細菌としてよく知られているのは“レジオネラ・ニューモフィラ”と呼ばれる細菌です。レジオネラ症は感染症法における“四類感染症”に分類されており、診断した医師は保健所へ届け出る必要があります。近年は検査方法の開発や普及に伴って、届出患者数に増加傾向がみられます。また、1年中生じ得る感染症ですが、特に旅行に出かける機会の多い7月や9月に患者数が多くみられるほか、中国、韓国、トルコ、イタリア、台湾など海外へ渡航した後にかかる人もいます。あらゆる年齢の人で感染・発症する可能性がある病気で、特に高齢者・新生児は肺炎を引き起こしやすいといわれています。また、お酒を大量に飲む習慣のある人、喫煙習慣のある人、透析療法を受けている人、移植患者、免疫機能が低下している人も肺炎を引き起こすリスクが高いとされています。レジオネラ症には複数の病型があります。中でも代表的なのは、自然軽快が期待できる“ポンティアック熱”と重症の肺炎が生じる“レジオネラ肺炎”です。

ポンティアック熱

突然発熱や寒気、筋肉痛などの症状が現れますが、一時的で特に治療をしなくても自然に治癒します。名称は、1968年に生じたアメリカ・ミシガン州ポンティアックでの集団感染から名付けられました。

レジオネラ肺炎

重症の肺炎を引き起こす病気で、治療を行わなければ命にかかわることもあります。1976年にアメリカ・フィラデルフィアの在郷軍人集会で集団肺炎が確認されたことから“在郷軍人病”と呼ばれることもあります。

原因

レジオネラ症はレジオネラ属菌への感染によって発症しますが、原因菌に曝露されたら必ず発症するというわけではありません。また、感染経路としてはエアロゾル感染、吸引・誤嚥ごえん感染、土壌からの感染などが挙げられます。ヒトからヒトへの感染はありません。

感染経路

エアロゾル感染

レジオネラ属菌の含まれた細かい霧やしぶきを口や鼻から吸い込むことによって感染します。身近なものでは、噴水、加湿器、循環式浴槽、ジャグジーなどによる感染が報告されています。

経口感染

川や温泉などでレジオネラ属菌の含まれた水を飲み込んでしまうといったことで感染します。

土壌からの感染

レジオネラ属菌の含まれた腐葉土などの粉塵を吸い込むことによる感染もあると考えられています。

症状

レジオネラ症の症状は病型によって大きく異なります。主なレジオネラ症であるポンティアック熱とレジオネラ肺炎の症状は以下です。

ポンティアック熱

ポンティアック熱の主な症状は、突然の発熱、寒気、筋肉痛などインフルエンザに似た症状です。潜伏期間は一般的に短めで、数時間〜48時間程度といわれています。特に治療をしなくても2〜5日程度で自然に軽快します。

レジオネラ肺炎

レジオネラ肺炎では、2〜10日ほどの潜伏期間を経た後、初期症状として発熱や食欲の低下、頭痛、体のだるさ、無気力などの症状がみられます。中には、筋肉痛や下痢、反応がなくぼんやりとした状態に至る人もいます。病気の進行とともに、38℃を超える高熱となり、咳や寒気、胸の痛み、呼吸困難などが生じるようになります。およそ半数の患者に痰がみられ、約3分の1の患者に血痰がみられるといわれています。レジオネラ肺炎は軽症から重症までさまざまな度合いがみられますが、無治療の場合には発症から1週間程度で悪化し、重症の肺炎に至り、時に命に関わることがあります。

検査・診断

症状などからレジオネラ症が疑われた場合、尿・痰・血液などを採取し、原因菌やその抗原の存在を確認することで確定診断に至ります。もっとも多くみられる“レジオネラ・ニューモフィラ”の場合、尿中抗原検査キットによる検出が普及していますが、一度感染したことのある人では現在感染していなくても結果が陽性になることがあります。痰の中の菌の遺伝子を検出する“LAMP法”では、レジオネラ・ニューモフィラ以外のレジオネラ属菌の検出が可能です。また、必要に応じて血液検査による抗体検査も実施します。

治療

ポンティアック熱の場合、治療をしなくても自然に治癒する傾向にあるため、経過観察となることが一般的です。時に薬物療法などで症状を抑えることも検討されます。一方で、レジオネラ肺炎では発見・治療が遅れると命に関わることもあるため、速やかな治療が必要です。具体的には薬物療法として抗菌薬の処方が検討されることが一般的で、第一選択薬はニューキノロン系抗菌薬です。そのほか、マクロライド系抗菌薬やリファンピシンなどが検討される場合もあります。

予防

2022年現在、レジオネラ症に有効なワクチンはありません。個人でできる予防方法としては、水まわりを清潔に保ち、レジオネラ属菌の増殖を防ぐことが挙げられます。たとえば、加湿器を使用している人の場合、水を毎日入れ替え、容器をきれいに洗って使うとよいでしょう。なお、レジオネラ属菌は60℃の温度に5分間さらされると殺菌されるため、水を加熱するタイプの加湿器を使用することで感染する確率を下げられると考えられています。そのほか、追い焚き機能の付いた風呂など循環式浴槽を使用している場合には、定期的に浴槽を掃除し、細菌の発生などによって生じるぬめりを取り除いておくことが大切です。

 
 

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