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子どもの海外旅行について

[2019.07.22]

 今年も夏休みに入りました。最近ではお子さんと海外に家族旅行に行かれる方々もよくみられるようになりました。小さなお子さんを連れて海外旅行を予定されているご家族の方へ、渡航医学の観点からアドバイスをさせていただきます。

<出発までの注意点>

  • 航空機搭乗に関しては、生後1週間未満の新生児は適さない状態とされており、多くの航空会社は生後8日目の新生児から搭乗許可をしています。しかしながら、定頸前の乳児は縦に抱くことができないため、大きな荷物を持っての移動が大変です。これは私自身、3か月の長男をベトナム赴任時に帯同させた経験に基づくものです。また子どもは予期しない行動をよく起こすことから、十分な余裕をもったスケジュールをたてる必要があります。現地での滞在を充実したものにするためには、子どもにとって負担にならない程度のフライト時間と時差を考慮して目的地を選択してあげることが良いと思います。狭い空間での長時間のフライトは子どもにとっては大きなストレスになりますので、日常的に使用している玩具やよく読んでいる絵本などを持参するのも一案です。機内環境は湿度が10%以下で非常に乾燥していることから水分補給を促すようにし、肌寒く感じるようであれば衣服や掛物などでの調整も適宜行うようにします。
  • 短期の旅行であれば急いで渡航者用のワクチンを行う必要性は低いですが、乳幼児期に日本で行われているワクチンをしていない場合には、接種時期に応じて済ませておくと良いでしょう。
  • 現地で突然の高熱や下痢が起こった場合に備え、解熱鎮痛薬や整腸薬を携行しておくと安心です。これらは自費であれば医療機関でも処方してもらえます(当院でも可能です)。持病があり常用薬や緊急時の薬剤を持参する場合には、英文の情報提供書を用意しておくと現地の医療機関を受診する時などに有用です。可能であれば主治医の先生に用意してもらって下さい。海外で医療を受ける際の費用は日本に比べれば通常は高額となりますので、不測の事態に備え、たとえ持病がなくても家族全員が補償を受けられる海外旅行保険への加入をお勧めします。

<現地での注意点>

  • 日本では水道水から水を飲むことは当たり前のことですが、海外では水道水が硬水であることが多く、慣れない日本人が飲むと下痢をすることがあります。水道水を飲むことができる地域であっても、飲料用の水を購入することをお勧めします。
  • 夏季は不感蒸泄が多くなる季節で、特に滞在先が熱帯地域であれば、日本にいる以上に十分な水分を与えるとともに、塩分の補給にも努めるようにして脱水を防ぐようにしなければなりません。一方で熱帯地域では屋内の冷房が過剰に使用されていることが多く、外気との温度差から体調を崩すこともありますので、体温調節ができるような上着を持参するようにして適宜活用して下さい。
  • 現地での食事では日本と同様に全てのものが衛生的であるとは限りません。特に開発途上国では生ものはできるだけ避けるようにして、加熱されたものを摂取するように心がけて下さい。当たり前のことですが、食事前の手指衛生も忘れないようにしましょう。
  • 熱帯・亜熱帯地域では蚊によって媒介される感染症が流行していることがあります。特に日本の夏季にあたるこの時期は多くの東南アジア諸国では雨季にあたり、蚊媒介感染症が増加する時期になりますので注意が必要です。日本脳炎などワクチンが存在する感染症はワクチンを済ませておけば安心ですが、デング熱など特効薬やワクチンが存在しない感染症は子どもが蚊に刺されないようにするために、できるだけ肌を漏出しない、ディートやイカリジンを含有する昆虫忌避剤(薬局で買うことができます)を使用するなどの対策を講じる必要があります(ホームページ:デング熱、マラリア予防内服の項目をご参照下さい)。
  • 動物との接触にも十分注意が必要です。日本国内では認められませんが、世界各地では狂犬病を持った哺乳動物が存在します。子どもたちは興味本位で動物に近づき、安易に手を出すことによって咬まれてしまうこともあるでしょう。もし咬まれた場合には直ちに流水で十分に洗浄し、狂犬病の発生がある地域では必ず現地で医療機関を受診し、傷の処置、抗菌薬の投与、狂犬病発症予防としてのワクチン接種を受けるようにします。規定回数の接種が完了するまでは帰国後も医療機関の受診が必要です(ホームページ:狂犬病の項目をご参照下さい)。
  • 日本でも夏季の紫外線は強力ですが、赤道周辺では日本の2倍以上の紫外線量となっており、皮膚への影響は過大なものとなります。紫外線が最も強くなる昼間の屋外での活動はできるだけ避けるようにして、日光を受ける状態では肌を漏出しない、帽子を着用する、日焼け止めをしっかりと塗布するなどの対策が必要です。
  •  現地で病気に罹患したり、事故に遭った場合は、滞在先のホテルなどで医療機関を紹介してもらえますが、言葉の問題もあると思われるので、事前に滞在先の医療機関情報を確認し、所在地、規模、対応診療科、対応言語などを調べておくことをお勧めします。

帰国後に体調不良となった場合にはお気軽にご連絡下さい。当院では輸入感染症の専門診療を行っております。

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