HIV感染症 HIV / AIDS
HIVとAIDS
HIV感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus; HIV)に感染した状態のことで、HIV感染症が進行して免疫状態が悪くなってきた時に感染力の弱い病原体などの感染(日和見感染)により病気を発症した状態を後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS)と呼びます。従ってHIV感染とAIDSは同じではありません。HIVはヒトの免疫担当細胞であるCD4陽性Tリンパ球(CD4細胞)に感染して免疫系を徐々に破壊していきます。無治療例では、感染初期(急性期)・無症候期・AIDS発症期の経過をたどります。
臨床経過
感染初期
感染の機会があってから2-6週間程度の経過をおいて、発熱、倦怠感、筋肉痛、リンパ節腫脹、発疹などインフルエンザのような症状が出現することがあり、これを急性HIV感染症と呼びます。このような症状は通常数週間で自然に治ります。
無症候期
急性期症状の消失後もHIVは増殖を続けますが、免疫状態が正常であれば、症状のない状態が長期間続きます。
AIDS発症期
HIVの増殖と免疫状態のバランスが崩れた時に、指標疾患である23種類の日和見感染症*を発症します。
*23種類の日和見感染症
カンジダ症、クリプトコッカス症、コクシジオイデス症、ヒストプラズマ症、ニューモシスチス肺炎、トキソプラズマ症、クリプトスポリジウム症、イソスポラ症、化膿性細菌感染症、サルモネラ菌血症、活動性結核、非結核性抗酸菌症、サイトメガロウイルス感染症、単純ヘルペスウイルス感染症、進行性多巣性白質脳症、カポジ肉腫、原発性脳リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、浸潤性子宮癌、反復性肺炎、リンパ性間質性肺炎・肺リンパ過形成、HIV脳症、HIV消耗性症候群
検査
診断には血液検査でHIVの抗原・抗体を調べます。最初に行うスクリーニング検査では偽陽性がみられることがあるので、万が一陽性であった場合には確定検査を行います。感染が確定した場合には、血中のウイルス量(HIV-RNA量)とCD4陽性リンパ球数が病気の状態や経過を知る指標となります。
治療
抗HIV薬3剤以上を併用した強力な治療(Anti-retroviral therapy; ART)を行います。現在では1日1回1錠という治療が主流となっていますので、日常生活に大きな支障なく服薬を続けられるようになりました。また、早期治療が予後を改善する、飲みやすく副作用も少ない薬剤が開発されるようになったことなどの理由から、治療開始時期が早期化されています。治療効果は薬を決められたとおりにしっかりと服用すること(アドヒアランス)に大きく影響を受けますので、治療に関する内容をしっかりと理解をしたうえで、治療を開始することが重要です。免疫状態が安定していれば、専門医のもとでの外来治療・通院も可能です。
<HIV感染症「治療の手引き」日本エイズ学会 HIV感染症治療委員会編 より抜粋>
当院は、身体障害者福祉法第15条によるヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能障害の診断を担当する医師が診療を行っており、自立支援医療(更生医療)指定診療所の認定を受けていますので、診断書の作成、意見書の作成が可能です。
HIV感染に関する相談も随時受けております。プライバシーを必要とする場合は、カウンセリングルームでの診察も可能です。但し、明らかな症状がない場合には、相談や検査は自費となりますのでご了承下さい。当院では簡易キットによる即日検査も実施しています。
当院は「厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業・HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究班」の特別研究協力者です。