マラリア Malaria
マラリアは、熱帯や亜熱帯地域を中心に世界中で流行している感染症であり、ハマダラカという蚊に刺されることで感染します。感染すると悪寒や高熱などの激しい症状が現れ、適切な診断や治療が遅れると生命に危険を及ぼす恐れがあります。特に熱帯熱マラリアは病状の進行が早く、早期の医療介入が極めて重要です。東京都千代田区のグローバルヘルスケアクリニックでは、海外渡航後の発熱に対する迅速な検査や治療体制を整えています。
マラリアとはどのような感染症か
マラリアは、マラリア原虫と呼ばれる単細胞の寄生虫が赤血球に感染することで発症する全身性の感染症です。主にアフリカ、東南アジア、中南米などの熱帯・亜熱帯地域で広く見られ、海外渡航者が現地で蚊に刺されて感染し、帰国後に発症する事例が毎年報告されています。
日本人を含む非流行地の住民はマラリアに対する免疫を持たないため、体内の原虫数が少なくても急激に重症化しやすい特徴があります。マラリア流行地域から帰国した後に発熱が見られた場合は、風邪と自己判断せず、速やかに専門的な医療機関を受診することが強く推奨されます。
海外からの帰国後に体調を崩された場合の詳しい診療方針については、海外から帰国後の診療のページを参照してください。
マラリアの感染経路と原因となる原虫の種類
マラリアの主な感染経路は、マラリア原虫を保有するハマダラカの吸血によるものです。蚊がヒトの血を吸う際に唾液とともに原虫が体内へ侵入し、血流に乗って肝臓へと到達します。肝臓の細胞内で増殖した原虫は再び血液中に放出され、赤血球に侵入して破壊と増殖を繰り返します。
日常生活においてヒトからヒトへ直接感染することはありませんが、まれに輸血や針刺し事故、母子感染によって血液を介して感染することがあります。ヒトに感染するマラリア原虫には主に4つの種類が存在し、それぞれ潜伏期間や発熱の周期、重症化のしやすさが異なります。
ヒトに感染する主なマラリア原虫の特徴
| 熱帯熱マラリア | 診断や治療が遅れた場合に多臓器不全などを起こし命に関わる危険があるため、悪性マラリアとも呼ばれます。通常2週間から3週間程度の潜伏期間を経て発症します。 |
|---|---|
| 三日熱マラリア | 48時間周期(発熱の3日目)で高熱を繰り返す特徴があります。肝臓内に休眠体として長期間潜伏し、治療後もしばらく経ってから再発することがあります。 |
| 四日熱マラリア | 72時間周期(発熱の4日目)で発熱を繰り返します。潜伏期間が数ヶ月から数年に及ぶ場合もあります。 |
| 卵形マラリア | 三日熱マラリアと類似した性質を持ち、48時間周期で発熱します。三日熱と同様に肝臓内に原虫が休眠体として残る特徴があります。 |
マラリアの主な症状と経過
マラリアの代表的な症状は、突然の悪寒戦慄(強い寒気と震え)を伴う高熱です。発熱初期には激しい寒気から体がガタガタと震え、その後40度近い高熱とともに皮膚の紅潮や発汗が現れます。熱が下がると一時的に症状が和らぎますが、再び同じような発熱発作を繰り返します。
マラリア原虫が赤血球内で分裂・増殖し、赤血球が一斉に破裂するタイミングに合わせて発熱が引き起こされます。原虫の種類によって規則的な発熱間隔が見られますが、感染初期や複数の原虫に同時感染している場合は典型的な周期を示さないことも少なくありません。
発熱に伴って現れやすい症状
- 激しい頭痛
- 全身の倦怠感や強い脱力感
- 筋肉痛や関節痛
- 吐き気や嘔吐、食欲不振
特に熱帯熱マラリアでは発熱の周期が不規則になりやすく、解熱時であっても全身の倦怠感や不快感が持続する傾向があります。重症化すると脳マラリアによる意識障害や腎不全、重度の貧血、多臓器不全を引き起こし、発症から短期間で生命に危機が及ぶことがあります。
マラリアの検査と診断方法
マラリアの診断は、渡航歴の確認と血液を用いた顕微鏡検査によって行われます。患者さんの血液から塗抹標本を作成し、ギムザ染色を行って顕微鏡下で赤血球内のマラリア原虫の有無や形態、原虫の種類、感染率を直接確認します。
顕微鏡検査のほかに、補助的な指標として一般的な血液検査を実施します。マラリアに感染すると血小板減少が高頻度で認められるほか、溶血に伴うLDHの上昇やビリルビン値の上昇が見られることがあります。
マラリアの診断に用いられる検査一覧
| 血液塗抹顕微鏡検査 | 赤血球内の原虫を直接観察し、確定診断と原虫種の特定を行います。 |
|---|---|
| 血球計算検査 | 血小板減少の有無を確認します。病初期には貧血が目立たないこともあります。 |
| 生化学検査 | LDHや総ビリルビンの数値を測定し、体内の溶血状態や臓器への影響を評価します。 |
| 迅速簡易診断キット | 海外で普及している抗原検出キットです。当院では研究用として常備しており、迅速な診断補助に活用しています。 |
マラリアの治療法と処方薬
マラリアの治療は、感染している原虫の種類や重症度、渡航先の薬剤耐性状況に応じた適切な抗マラリア薬の服用が基本となります。発症の早期段階で的確な治療を開始できれば、後遺症を残すことなく順調な回復が期待できます。抗マラリア薬については予防内服のページに写真を掲載しています。
三日熱マラリアおよび卵形マラリアの治療では、血液中の原虫を排除する治療薬に加えて、肝臓に残る休眠体を根絶して再発を防ぐためにプリマキンという薬剤を追加で服用する必要があります。
日本国内で保険適用となっている主な治療薬
- メフロキン(メファキン「ヒサミツ」錠)
- アトバコン・プログアニル合剤(マラロン配合錠)
- アーテメター・ルメファントリン合剤(リアメット配合錠)
- プリマキン(プリマキン錠「サノフィ」)
当院では、国内で承認されている抗マラリア薬および研究用の迅速簡易キットを常備しており、渡航医学の知見に基づいた迅速な処置が可能です。感染症の専門的な診療内容については、感染症内科のページも合わせてご確認ください。
マラリアの流行地域と感染予防対策
マラリアはサハラ以南のアフリカ、東南アジア、南アジア、中南米などの熱帯地域で広く流行しています。流行地域へ渡航される際は、蚊に刺されないための防蚊対策を徹底するとともに、渡航先の感染リスクに応じた予防内服を検討することが重要です。
世界保健機関(WHO)によるマラリア発生地域マップ
茶色で示された地域がマラリアの発生地域です。渡航前には現地の最新流行情報を確認してください。(出典:世界保健機関)
重症マラリアの血液塗抹標本像
赤血球内に多数の原虫が寄生した状態になると救命が極めて困難になります。流行地域からの帰国後に体調不良や発熱が生じた場合は、一刻も早くご相談ください。
渡航前の予防薬処方や健康相談については、予防内服(マラリア・高山病)のページや渡航外来のページで詳しくご案内しています。
マラリアについてのよくある質問
Q1. 流行地域から帰国して数週間後に熱が出ましたが、マラリアの可能性はありますか?
マラリアの可能性が十分に考えられます。マラリアは感染した原虫の種類によって潜伏期間が異なり、帰国後数週間から数ヶ月経ってから発熱することもあります。問診の際には必ず渡航歴をお伝えください。
Q2. マラリアは家族や周囲の人に感染しますか?
マラリアはハマダラカの吸血によって感染するため、通常の日常生活において咳や飛沫、接触などを通じて周囲の人にうつることはありません。
Q3. マラリアの予防薬は処方してもらえますか?
当院では渡航先や滞在期間に合わせたマラリア予防薬の処方を行っています。料金や服用スケジュールについては渡航外来にてご相談ください。
院長よりメッセージ
マラリアは、早期発見と適切な薬剤投与が行われれば治癒が期待できる疾患ですが、受診が遅れると急激に重症化し命に関わる極めて危険な輸入感染症です。私は日本感染症学会認定専門医および指導医、米国熱帯医学会認定医の資格を有し、大学院ではマラリアの基礎研究、その後も国内外で多くのマラリア患者さんの診療を行ってまいりました。長年の経験と最新の知見をもとに早期検査および早期治療が可能な体制を整えております。
当クリニックは、麴町駅から徒歩1分、半蔵門駅から徒歩5分、市ヶ谷駅や四ツ谷駅からも徒歩10分の位置にございます。ウェブ予約やウェブ問診、キャッシュレス決済を導入し、スムーズな受診環境を整えております。アフリカや東南アジアなどの流行地から帰国後に発熱がある方は、躊躇することなく速やかにご受診ください。
