高血圧症 Hypertension
高血圧症の背景
高血圧は日常的によくみられる状態で、特段自覚症状もないことから病気であるという認識がない場合や治療をしていない場合も少なくはありません。しかしながら120/80mmHgを超えて血圧が高くなるほど、脳心血管病、慢性腎臓病などに罹る危険性、死に至る可能性は高くなります。すなわち適正な血圧を維持、管理することは脳心血管病などの発症率や死亡率の低下、さらには医療費の適正化、国民の健康寿命延伸を実現できることになるのです。
高血圧の診断基準
高血圧の基準値は診察室での血圧、家庭での血圧、24時間自由行動下での血圧で異なります。診察室血圧値は140/90 mmHg 以上、家庭血圧値は135/85 mmHg 以上、24時間自由行動下血圧値は130/80 mmHg 以上の場合に高血圧として対処します。病院で測定した血圧値と家庭で測定した血圧値に差がある場合は家庭血圧値を優先して診断します。家庭血圧測定は原則2回測定してその平均値をとります。高血圧の診断および降圧薬の効果判定には朝・晩それぞれの測定値7日間の平均値を用います。
高血圧の治療方針
高血圧の治療(降圧治療)は脳心血管病の発症、進展、再発による死亡、生活の質の低下を抑制します。降圧治療には生活習慣の修正を含む薬を使わない非薬物療法と、薬物療法があります。薬物療法は、血圧が持続して高いことの確認、その数値の評価、他の病気による高血圧(二次性高血圧)ではないかの確認、危険因子、臓器障害、脳心血管病の既往などの将来の影響因子があるかどうかを総合して行うかどうかを判断します。
血圧レベル以外の脳心血管病の危険因子
- 65歳以上
- 男性
- 喫煙
- 脂質異常症
- 糖尿病
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
- 50歳未満発症の心血管病の家族歴
臓器障害・脳心血管病の既往
- 脳出血・脳梗塞
- 心筋梗塞・非弁膜症性心房細動
- 蛋白尿
生活習慣の修正
生活習慣の修正は高血圧予防や降圧薬開始前のみならず、降圧薬開始後も重要です。複合的な生活習慣の修正はより効果的になります。
- 減塩目標は食塩 6 g /日未満
- 野菜、果物を積極的に摂取、飽和脂肪酸、コレステロールの摂取を控える
- 適正体重を維持する(BMI < 25)
- 軽強度の有酸素運動を毎日30分、または週180分以上行う
- 節酒(男性20-30 ml /日以下、女性10-20 ml /日以下)
- 禁煙
<日本高血圧学会発行 高血圧治療ガイドラインより抜粋>