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インフルエンザ Influenza

概要

 インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症で、よく知られているのは日本で冬季に流行する季節性インフルエンザです。インフルエンザウイルスにはA, B, C型の3種類がありますが、近年世界で流行しているのはA型(AH1N1 pdm09, AH3N2)B型(ビクトリア系統、山形系統)4種類になります。北半球では12~3月、南半球では6~9月頃に流行がピークとなりますが、熱帯地域では一年中発生がみられます。従って海外渡航者の輸入感染症としても重要な位置付けとなっています。ウイルスは上気道で増殖して、咳やくしゃみによって排泄される飛沫を吸い込むことによって感染(飛沫感染)します。時に手指に付着したウイルスを自身の鼻や口を触ることで感染(接触感染)することもあります。

症状

 1~3日程度の潜伏期を経て通常は38℃以上の高熱、悪寒、倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などの症状が突然出現し、咽頭痛、咳嗽、鼻汁などの上気道症状がこれに続きます。腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸症状がみられることもあります。通常の経過では何も治療をしなくても1週間程度の経過で自然に治ります。いわゆるかぜと比べると全身症状が強い印象です。一般的にはA型ウイルスの方が感染力、症状ともに強いといわれています。健康な人であれば何もしなくても自然に治る感染症ですが、高齢者、呼吸器・循環器・腎臓に慢性疾患がある方、免疫機能が低下している方は持病が悪化したり、ウイルス感染による肺炎などの合併症の危険性が高まるために注意が必要です。また小児の場合は急性脳症を起こす可能性があり、同様に注意が必要です。

感染対策

 最も重要なことは流行期の手指衛生です。これはインフルエンザに限らず、すべての感染症予防に効果が期待できます。また当たり前のことですが、流行期にはできるだけ人ごみを避けて感染の機会を減らすようにし、ご自身は免疫力を低下させないように規則正しい生活(十分な睡眠、バランスのとれた食生活、ストレスをためないなど)を送ることが重要です。感染者と接触する際のマスクは飛沫感染対策として有用と考えられますが、うがいは感染予防に十分な科学的根拠がないと言われています。またマスクをしていても、頻回に触ったり外したりすることで手指にウイルスが付着して接触感染を起こす可能性があります。

 予防手段として科学的根拠があるのはワクチン接種です。現行の皮下接種によるインフルエンザワクチンは、感染予防より重症化の防止に重点が置かれた予防法であり、健康な成人でも感染防御レベルの免疫を獲得できる割合は70%程度といわれていますが、流行期においてワクチン接種した半数以上の集団に免疫が獲得できるということは、感染拡大を抑制することに繋がります。すなわち「接種をしてもかかってしまったので意味がない」という考えは医学的、感染対策の観点からは妥当ではありません。現在市販されているインフルエンザワクチンはA型2株、B型2株が含まれる4価ワクチンです。

検査

 多くの医療機関で数分以内に結果が判明する迅速検査キットが頻用されています。検体は鼻腔吸引液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液などを使用します。但し、発症した直後ではウイルス量が検出限界に達しておらず正確な判定ができないことがありますので、検査をご希望される方は症状を自覚してから少なくとも半日以上経過してからの実施をお勧めします。また検査精度の問題から、陰性であってもインフルエンザではないとの証明は困難ですので、あくまで臨床経過や周囲の流行状況などを総合的に判断して診断することとなります。ご来院の方で検査を希望される場合は、これらの内容を十分理解した上でお申し出下さい。

治療

 日本で使用可能なインフルエンザ治療薬は、ノイラミダーゼ阻害薬であるオセルタミビル(タミフル®)、ザナミビル(リレンザ®)、ラニナビル(イナビル®)、ペラミビル(ラピアクタ®)とCap依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬であるバロキサビル(ゾフルーザ®)です。ノイラミダーゼ阻害薬はウイルスそのものの増殖を抑えるのではなく、増殖したウイルスが細胞内から出られなくすることで効果を発揮しますので、発症後48時間以内の服薬開始が推奨されています。エンドヌクレアーゼ阻害薬はウイルスの増殖に必要なエンドヌクレアーゼを阻害することでウイルスを増殖できなくすることから、発症後いつでも効果が期待できます。しかしながら、薬剤耐性を獲得しやすいともいわれており、本剤の選択には慎重な判断が問われます。この他にも科学的根拠がある治療薬として、漢方薬の麻黄湯があります。麻黄湯は悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないもののに対する効能が期待できますので、悪寒が強く、まだ汗が出ていないようなインフルエンザ初期には良い適応となります。実際の薬効もオセルタミビルと同等の症状軽減効果があるという報告もあります。

 高熱や頭痛に対しては解熱薬を適宜使用することになりますが、アセトアミノフェンが推奨されます。ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン®)、メフェナム酸(ポンタール®)、アスピリンなどの非ステロイド抗炎症薬は小児のインフルエンザ脳症併発の可能性が指摘されているために使用すべきではありません。一般的なことではありますが、高熱時には安静を保ち、水分を十分にとるなど体力の温存を心がけることが最も重要なことです。症状が改善しても数日程度はウイルスが排出されていますので、他の方へ感染するリスクを軽減させるためにも、総合的な判断を仰いでから日常生活に復帰することが望まれます。

 

 

 

 

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