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高山病 Altitude sickness

高山病(高度障害)とは、低地から標高の高い場所へ移動した際に、気圧の低下に伴う酸素の欠乏によって引き起こされる身体の不調です。登山だけでなく、航空機や車などで短時間に高地へ到達した場合にも起こりやすく、頭痛吐き気、倦怠感などが現れます。重症化すると命に関わる病態へ進行することもあるため、事前の知識と適切な予防策が欠かせません。

当院は、麹町駅から徒歩1分、半蔵門駅から徒歩5分の場所に位置し、渡航医学や感染症診療に注力するクリニックです。海外の高地旅行や登山を予定されている方に向けて、予防薬の処方や高山病に関する専門的な医療相談を行っております。渡航前の健康管理や予防について気になる点がございましたら、お気軽にご相談ください。

高山病とは?どのような仕組みで起こるのか

高山病は、標高が高くなるにつれて大気圧が下がり、空気中の酸素分圧が低下することで体内に十分な酸素を取り込めなくなる低酸素状態が原因で発症します。一般的には標高2,000メートルから2,500メートル以上の高地で起こりやすいとされています。急激に高度を上げると、身体が低酸素環境に適応(順応)する時間が足りず、自律神経や血管、各臓器の機能に乱れが生じます。個人の体力や運動能力とは関係なく、どなたでも発症する可能性がある病態です。

高山病について | メディカルノート

高山病の主な症状と3つの病態

高山病の症状は、軽症の山酔いから生命を脅かす重篤な状態まで幅広く存在します。病態や影響を受ける部位によって、主に以下の3種類に分類されます。

急性高山病(AMS)

標高2,000メートル付近からみられる初期段階の病態で、「山酔い」とも呼ばれます。高所に到着後、6時間から10時間程度で症状が現れることが一般的です。

  • 頭痛・・最も代表的な症状で、脈打つような痛みがみられます
  • 消化器症状・・食欲不振吐き気、嘔吐などが起こります
  • 全身症状・・強い倦怠感、疲労感、脱力感が生じます
  • 自律神経症状・・めまいや立ちくらみ、不眠などが現れることがあります

急性高山病の症状は通常、それ以上の登高を控え安静にしていれば24時間から48時間程度で改善傾向に向かいますが、無理をして高度を上げると悪化する危険があります。

高地肺水腫(HAPE)

標高2,500メートル以上の高所に急激に登った際、24時間から96時間後に発症することが多い重篤な病態です。肺の血管内の圧力が上昇し、肺胞内に水分が染み出して酸素交換ができなくなります。

  • 呼吸器症状・・安静時でも続く強い呼吸困難や激しい咳
  • 胸部の異常・・胸の圧迫感、ゼーゼーという呼吸音、ピンク色の泡状の痰
  • 全身徴候・・極度の運動能力低下、頻呼吸、頻脈、唇や爪が紫色になるチアノーゼ

高地肺水腫が疑われる場合は、一刻も早く低い標高へ下山させる緊急処置が必要です。

高地脳浮腫(HACE)

低酸素状態によって脳の血管から水分が漏れ出し、脳組織がむくんでしまう極めて危険な状態です。急性高山病から進行して発症することが多く、数時間で急速に悪化することがあります。

  • 精神状態の変化・・錯乱、眠気、無気力、判断力の低下
  • 運動機能の異常・・まっすぐ歩けない(運動失調)、手足の麻痺
  • 意識障害・・進行すると昏睡状態に陥り、命に関わります

高地脳浮腫の兆候がみられた場合も、直ちに高度を下げることが絶対的な優先事項となります。

高山病になりやすい人・リスクを高める行動

高山病の発症しやすさには個人差がありますが、過去に高山病にかかった経験がある方は再発のリスクが高いと考えられています。また、以下のような行動や要因が発症のリスクを高めます。

  • 急速な登高・・航空機やロープウェイなどで短時間に一気に高度を上げること
  • 高地到着直後の過度な運動・・身体が順応する前に激しい運動を行うこと
  • 脱水状態・・高地では呼気や皮膚からの水分蒸発が増加し、血液の循環が悪化します
  • アルコールや睡眠薬の摂取・・呼吸を抑制し、低酸素状態を助長させる要因となります

高山病を防ぐための予防策と現地での対処法

高山病の予防において最も重要な原則は、身体を徐々に薄い空気に慣らしながらゆっくりと高度を上げることです。日程に余裕を持たせ、計画的な行動を心がけましょう。

日常生活と行動における注意点

高地滞在中は、以下の対策を意識して行動してください。

  • ペース配分の調整・・グループ行動では最も歩行速度の遅い人にペースを合わせます
  • こまめな水分補給・・喉の渇きを感じる前に十分な水分を摂取します
  • 適切な栄養摂取・・消化器への負担を減らすため、炭水化物を中心に摂取し脂っこい食事は控えます
  • 到着初期の安静・・現地到着後の1日から2日間は無理な運動を避け、身体を休めます

高山病予防薬(アセタゾラミド)の活用

高山病の予防対策として、炭酸脱水酵素阻害薬であるアセタゾラミド(ダイアモックス®)の予防内服が有効な選択肢となります。アセタゾラミドは呼吸中枢を刺激して換気量を増やし、血中の酸素濃度を高める働きがあります。高地に到着する前日から服用を開始することが一般的です。アセタゾラミドは医療用医薬品であるため、事前の医師による診察と処方が必要です。予防内服をご希望の場合は、渡航前の受診をおすすめします。

予防内服の詳細については「予防内服(マラリア・高山病) Chemoprophylaxis」のページを参照してください。

現地で症状が現れた場合の対処手順

万が一体調に異変を感じた場合は、決して無理をせず以下の手順で対処してください。

  1. 登高の中止・・症状が消失するまでは、それ以上高い標高へ移動しないことが鉄則です
  2. 安静と対症療法・・軽い頭痛などには鎮痛薬を使用し、安静にして様子をみます
  3. 早期の下山・・安静にしても改善しない場合や、息切れ・ふらつきなどの重症化サインがみられた場合は、速やかに標高を数百メートル以上下げてください

高山病診療の料金について

高山病の予防内服薬の処方および渡航前の医療相談は、健康保険が適用されない自費診療(自由診療)となります。詳細な費用については当院までお問い合わせください。

渡航関連の診療内容全般については「渡航外来 Travel Clinic」のページを参照してください。

高山病についてよくある質問

Q1. どのくらいの標高から高山病のリスクがありますか?

A1. 一般的には標高2,000メートルから2,500メートル程度を超えると急性高山病の発症リスクが生じます。国内の富士山(3,776m)はもちろん、南米やチベット、北米などの高地都市を訪れる際にも注意が必要です。

Q2. 普段から運動して体力をつけていれば高山病になりませんか?

A2. 高山病の発症しやすさと体力や筋力、持久力の有無には直接的な相関がありません。アスリートのように体力のある方であっても、低酸素環境への適応速度には個人差があり発症することがあります。

Q3. アセタゾラミド(予防薬)に副作用はありますか?

A3. 主な副作用として、手足の指先や唇にしびれ感(ピリピリ感)が生じることや、利尿作用による頻尿、炭酸飲料の味が苦く感じられる味覚の変化などが報告されています。服用に際しては医師が既往歴やアレルギーの有無を確認いたします。

Q4. 海外旅行で高地を訪れる場合、いつ頃受診すればよいですか?

A4. 渡航の1か月前から2週間前を目安にご相談いただくことを推奨しております。高地への渡航に伴うワクチンの接種計画や他の持病の管理も含め、ゆとりを持って準備を進めることが可能です。

院長より

高山病は、適切な知識と計画的な予防策を講じることで、発症のリスクを大きく減らすことができる病態です。「自分は若いから大丈夫」「体力があるから問題ない」と過信せず、余裕を持った旅程を組み、必要に応じて予防薬の活用を検討することが安全な渡航への第一歩となります。

当院では、国際渡航医学会認定医(CTH® )や日本感染症学会認定感染症専門医、指導医としての知見を活かし、国内外の高地へ向かわれる方々への専門的なカウンセリングと医療支援を行っております。より高度な専門的判断が必要な場合には適切な専門医をご紹介する体制も整えております。

ウェブ問診やオンライン予約、キャッシュレス決済などを導入し、お忙しい皆様がスムーズに受診していただける環境を整えております。高所へのご旅行や出張を予定されている方は、ぜひ事前にご相談ください。

当院の診療方針や体制については「診療指針」のページおよび「ご挨拶」のページを参照してください。

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