更年期障害 Postmenopausal disorder
更年期障害(Postmenopausal disorder)は性腺ホルモンの低下に起因するもので、主に女性での症候群として理解されています。ホルモンの低下以外にも加齢による身体的な原因、成育歴や性格などの心理的因子、職場や家庭における人間関係などの社会的因子が複合的に関与することで発症すると考えられています。更年期は女性の加齢に伴う生殖期から非生殖期への移行期であり、日本では閉経前後5年の10年間とされています。この時期に現れる多彩な症状の中で、明らかな病気に起因しないものを更年期症状と呼び、日常生活に支障があるものが更年期障害と定義されます。
主な症状
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血管運動神経症状
顔のほてり、のぼせ(ホットフラッシュ)、異常発汗、動悸、めまいなど
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精神神経症状
情緒不安定、イライラ感、抑うつ、不安感、不眠、頭重感など
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その他の症状
運動器症状(腰痛、関節痛、肩こり、疲労感など)、胃腸症状(嘔気、食欲低下など)、皮膚粘膜症状(皮膚乾燥、痒みなど)、泌尿生殖器症状(排尿障害、頻尿、性交障害、陰部違和感など)
主な治療
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ホルモン補充療法
更年期障害の主な原因が女性ホルモンの減少であることから、ホルモン補充療法がおこなわれます。有効性に関するエビデンスが高く第一選択となりますが、検査上の条件や有害事象の発生を考慮する必要があり、婦人科専門医による治療が望まれます。
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漢方薬
多彩な症状を特徴とする更年期障害に対しては漢方薬がよく用いられます(漢方治療の項目をご参照下さい)。体力が低下して、冷え症、貧血傾向がある方は当帰芍薬散、虚弱体質で疲れやすく、不安・不眠、イライラ感などの精神神経症状がある方は加味逍遥散、体力があり、のぼせ傾向である一方で下半身の冷感、抵抗や圧痛を自覚する方は桂枝茯苓丸が良い選択肢といわれています。
<日本産科婦人科学会 日本産婦人科医会 産婦人科診療ガイドラインより一部抜粋>