漢方治療 Chinese medicine
漢方薬は、自然界に存在する植物や鉱物などの「生薬」を組み合わせて作られたお薬です。西洋薬は一つの症状に対して強い効果を発揮する単一成分が主流ですが、漢方薬は一つの製剤に複数の有効成分が含まれているため、多様な症状にアプローチできるのが大きな特徴です。西洋医学が検査結果や数値を重視するのに対し、漢方医学は患者さんの体質や症状そのものを深く観察します。そのため、冷え症や更年期症状といった、検査値には現れにくい不調の改善を得意としています。
漢方医学の主な特徴と西洋医学との違い
漢方医学は、特定の病名がつかない段階の不調(未病)や、体質に関連する症状の治療に非常に適しています。西洋医学が得意とするのは、原因が明確な病気や急を要する症状ですが、漢方医学は患者さんの症状や体質を重視することで、身体全体のバランスを整えていきます。例えば、虚弱体質やむくみなど、一人ひとりの状態に合わせた治療が可能です。また、一剤の服用で複数の病気が同時に改善されることも少なくありません。
漢方薬を服用する期間と期待できる効果
漢方薬は効果が出るまでに時間がかかると思われがちですが、実際には通常1~2週間程度で効果を実感される方が多いです。また、風邪の初期に用いる葛根湯や、急な痛みに対する芍薬甘草湯のように、頓服で速やかに効果を発揮するものもあります。一方で、慢性の症状や体質改善を目的とする場合は、1か月程度服用を継続することもあります。当院で処方する漢方薬は、多くの場合健康保険が適用されるため、費用面でも安心して継続いただけます。なお、副作用のリスクを避けるため、ご自身の判断で服用量を調整しないようにしてください。
当院で主に使用する漢方薬一覧
| 漢方薬名 | 主な効果・適応 |
|---|---|
| 麻黄湯 | 発汗作用があり、悪寒がして汗が出ていない状態に用いられます。抗インフルエンザ効果も実証されています。 |
| 葛根湯 | 風邪のひきはじめの代表薬です。慢性頭痛や肩こりの改善にも効果が期待できます。 |
| 麻黄附子細辛湯 | 虚弱体質の方や高齢者で、体が冷えて強い倦怠感を伴う場合に使用します。 |
| 小青竜湯 | 水のような鼻水や痰が出る風邪、またはアレルギー性鼻炎に適しています。 |
| 麦門冬湯 | 痰が少ない乾いた咳や、のどに張り付いて切れにくい痰を伴う咳に用いられます。 |
| 柴胡桂枝湯 | 発熱後、風邪の症状が長引いている場合などに有効です。 |
| 小柴胡湯 | 風邪が長引いた時などに広く用いられる処方です。 |
| 竹筎温胆湯 | インフルエンザや肺炎の回復期に、熱や咳が長引いて安眠できない場合に用いられます。 |
| 桔梗湯 | のどの腫れや痛みが強い時に使用します。即効性が期待できるのが特徴です。 |
| 小柴胡湯加桔梗石膏 | のどの腫れや痛みが強く、風邪が長引いている場合に用いられます。 |
| 清肺湯 | 粘り気が強く、出しにくい痰を伴う長引く咳に用いられます。 |
| 葛根湯加川芎辛夷 | 鼻づまり、水っぽい鼻汁、顔面の痛みなどを伴う急性副鼻腔炎に用いられます。 |
| 辛夷清肺湯 | 鼻づまりや膿のような鼻汁が出る、急性期を過ぎた副鼻腔炎(蓄膿症)に有効です。 |
| 補中益気湯 | 全身倦怠感や食欲不振など、体が弱っている時の補剤として広く使われます。 |
| 十全大補湯 | 病後の体力低下や疲労感、貧血・冷え症がある場合の滋養強壮に用いられます。 |
| 人参養栄湯 | 体力の低下、血行不良、咳などの呼吸器症状がある場合に適しています。 |
| 麻杏甘石湯 | 気管支のけいれんを緩和し、激しい咳や喘息の症状を鎮めます。 |
| 五虎湯 | 熱感や多汗を伴い、乾いた咳やゼーゼーする喘鳴がある場合に用いられます。 |
| 安中散 | 胃痛、胸やけ、食欲不振のほか、ストレスによる胃部不快感にも効果的です。 |
| 六君子湯 | 胃腸が弱く冷えやすい方の、胃もたれや食欲不振、嘔吐などに用いられます。 |
| 大建中湯 | お腹が冷えて痛み、腹部膨満感がある場合に非常に有効な処方です。 |
| 小建中湯 | 子どもの虚弱体質、夜尿症、夜泣きの改善などを目的として使われます。 |
| 半夏瀉心湯 | みぞおちのつかえ、吐き気、逆流感がある場合に用いられます。二日酔いにも有効です。 |
| 半夏厚朴湯 | のどがつかえたような違和感(梅核気)や、不安感・緊張を和らげる効果があります。 |
| 麻子仁丸 | 便が硬くなりやすい方のための便秘薬として、特に高齢者に用いられます。 |
| 芍薬甘草湯 | 急激に起こる筋肉のけいれんや痛み、いわゆるこむら返りに即効性があります。 |
| 当帰芍薬散 | 冷えやむくみ、立ちくらみを伴う更年期障害の代表的なお薬です。 |
| 加味逍遙散 | のぼせや発汗、イライラ、不安感など精神的な不調を伴う更年期症状に用いられます。 |
| 桂枝茯苓丸 | のぼせがある一方で足元が冷える、下腹部の張りを感じる方の更年期障害に有効です。 |
| 抑肝散 | イライラ感や怒りっぽさを和らげる効果があり、お子様の夜泣きにも使用されます。 |
| 酸棗仁湯 | 心身が疲労して眠れないといった不眠症状の改善に用いられます。 |
| 呉茱萸湯 | 吐き気を伴うような激しい片頭痛に高い効果を発揮します。 |
| 苓桂朮甘湯 | めまいやふらつきがあり、尿量が減少している場合に適しています。 |
| 五苓散 | むくみ、下痢、二日酔い、気圧の変化に伴う頭痛など、水の巡りを整えます。 |
| 猪苓湯 | 排尿を促す効果があり、膀胱炎の治療時に抗菌薬と併用されることがあります。 |
| 防風通聖散 | 脂質代謝を高め、内臓脂肪の低減に役立つと言われています。 |
